HQB認定住宅を手がける工務店の社長インタビュ―③
roomz 星野建築事務所
ハイクオリティビルドWEBサイトの連載「HQB認定住宅を手がける工務店の社長インタビュー」。第3回目にご登場いただくのは、新潟市に拠点をおくroomz 星野建築事務所の代表取締役社長・星野貴行さんです。この10年で会社の業務が拡大する中、現在も設計を主軸に過ごされています。現場主義の星野さんに住宅の設計にかける思いを語っていただきました。
「最初のプレゼンテーションではスタッフがお客さまに対して、家の構造と性能がいかに大事か、とじっくりとお話をします。その上でデザインの段階になってから、私が入っていくという進め方ですね。規模が大きな施設などは、私も図面を描いています。住宅のほうは、スタッフと現地調査を行い、キープランまでは描きます。それをご提案し、お客さまに家の雰囲気や考え方に納得していただいたところから、スタッフに引き継ぎ実施設計へと進んでいきます。社長といっても、ひとりの建築士ですからね」。
「デザインと性能が両立した良質な住宅」を目指しているという星野さん。
特に構造に関しては、試行錯誤した時期もあったといいます。
「弊社が手がける住宅は約7割がSE構法で、そのほかが鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨造です。木造軸組工法はやっていないですね。といいますのは、施設の場合、RC造や鉄骨造では構造計算をするのが当たり前なわけです。でも、木造軸組工法だとやりたいプランがあっても、構造計算するように逆算したときに、なかなか難しく現実的には成り立たないことがあった。そういった面で私は、SE構法はいわゆる木造のカテゴリーというより、『木造と鉄骨造の間の新しい構造』ととらえています。いいところどりの“ハイブリッド”という感じですね。また鉄骨造の場合、住宅の規模ではコスト的に合わないこともある。新潟はとても寒いので、結露が生じるなど断熱性能の面でデメリットもありました。その点、木造の暖かさと加工性のよさ、そして鉄骨のようにスパンを飛ばせるSE構法は、私たちの設計にはよくマッチしました」。
同社に家づくりを依頼される方は、「好みのスタイルで建てたいけれど、大手のハウスメーカーのような安心感もほしい」というスタンスの方が多いとのこと。最近、求められている住宅の傾向とは――。
「30、40代の方がメインということは変わっておりませんが、最近は60歳を過ぎたご夫妻からの依頼も多いですね。既にしっかりとした家を建ててきたようなゆとりのある方々で、高額な“終の棲家”が増えています。『これからの20年、30年を本当に好きなスタイルで暮らしたい』と望まれているようなケースです。子供たちの部屋を確保して、いずれは次の世代に引き渡せるようにつくる。SE構法のよさは、永く住み継いでいけるという面もありますよね。子育ても終わっているから、収納や外から帰ってきたときの手洗い場をどうするかという実用的な要素をあまり求めていない。だからプランがおおらかになり、別の楽しさがありますね。快適性やゆとりを優先するような方でないと、その年代から家を建てようと思わないので。そういう意味では、別荘も増えています」。
「住宅にゆとりを求めている方に向けて、設計するうえで心がけているのは『“非日常”を日常に入れる』こと。リゾートや海外、ホテルに行く…そういう感覚を味わえる場をつくるのが大事だと思います。敷地のロケーションがよければそれを生かしますが、住宅密集地の場合は、近隣の家など外の景色をなるべく取り込まないようにする。『家の中に入ったら、自分がどこにいるのかわからないように』というのは気をつけていますね。高い塀をつくったり、庭や光を取り込んだりしてロケーションを家の中につくる。ハコとは別にロケーション自体をつくるので高額になりやすいという面はありますが、その対価として心地よい空間ができるわけですから。プランニングでいちばん大切なのは、“周辺環境”なので、スタッフとともにそのあたりはよく見ます。ここからくる風は使えそうだねとか話しながら」。
「いま関東や中部地方の設計もしておりまして、あまり地域という枠組みを意識しないで、今後もいろいろなものを手がけていければと思っています。実際にオフィスや施設設計も増えてきているので、そのノウハウを住宅にもフィードバックしていきたいですね。そこを利用する人がいかに快適に過ごせるかというのは共通しているので。建築という大きなカテゴリーで仕事の幅を広げていきたいと思っています」。
roomz 星野建築事務所 ハイクオリティビルド認定住宅
HQB認定062 『10年後も楽しめる庭を愛で豊かに過ごす方形造りの平屋』
HQB認定079 『外との絶妙なバランスをとったスリット窓が巡る邸宅』
HQB認定081 『ガラスの階段を介してLDKとつながるガレージハウス』