HQB 社長インタビュー

HQB認定住宅を手がける工務店の社長インタビュ―⑤
フリーダムデザイン

2024.06.21

ハイクオリティビルドWEBサイトの連載「HQB認定住宅を手がける工務店の社長インタビュー」。第5回目にご登場いただくのは、岩手県盛岡市に拠点をおくフリーダムデザインの社長を務める小池康也さんです。パートナーで専務取締役兼、インテリアコーディネーターの小池祥子さんと二人三脚で歩んできた会社も今年で13年目。ここに至るまでの険しい道のりと家づくりへの思いについて伺ってみました。

 

フリーダムデザイン代表取締役小池康也様

小池 康也●こいけ やすなり/1968年新潟県生まれ。大学卒業後、ミサワホームの営業職を経て、ゼネコンにて住宅事業部の起ち上げ責任者に。2011年にパートナーの小池祥子とフリーダムデザインを設立、代表取締役に就任。二級建築士、宅地建物取引士の資格をもつ。趣味は、映画鑑賞、社交ダンス、お酒の肴をつくること。

 

建築を学ぶなかで“人と接する住宅を手がけていきたい”と、ハウスメーカーに就職した小池康也さん。「最初は営業を」という会社の方針で子会社の長野勤務になり、土地探しやプランの提案に携わってきました。一方、フリーのインテリアコーディネーターとして経験を積んできた小池祥子さんが、ひと足先に1998年にフリーダムデザインの前身である小池インテリアコーディネートオフィスを設立。それぞれのスタイルでスキルアップを重ねていったといいます。

 

「私は長野で仕事があるからいいけれど、妻にとっては全然関係ない土地だったので…。それで、会社に希望を出して妻の故郷である盛岡の支社で働くことにしたんです。その後は、ご縁があって盛岡の建設会社に転職しまして。そこで新たに住宅事業部を起ち上げることになり、そのインテリア部門を外部のスタッフとして妻に手伝ってもらいました」。

壁面の一部はベルギーブリックタイルにして、ラフで重厚感のある素材で端正な空間にアクセントが生まれた。NYのストリートで出合ったアートを飾って。(ハイクオリティビルド認定住宅:Y邸 撮影/傍島利浩)

 

小池康也さんが社長、小池祥子さんが専務取締役として「フリーダムデザイン」を設立したのは、2011年の東日本大震災が起こった5か月後のこと。

 

「結婚前は『いつかふたりで会社を』と妻とよく話していましたが、段々と“実現しない夢”のようになってきていたんです。でも、震災があって道半ばで亡くなった方々のことを思うと、残されたものとして人生やりたいことを実現したほうがいいんじゃないか…と、チャレンジすることにしました。岩手も津波で沿岸の地域は住むところがなくなり、ネガティブな要素だけが揃っていた時代で…。妻と一緒でなかったら、起ち上げられなかったかもしれません。仕事はたくさんあるけれど、職人不足で新しい会社の仕事は受けてくれなくて。それでも、ゼネコン時代の伝手で協力してくれる業者さんが少しずつ現われ、なんとか続けていくことができました」。

間接照明で居心地のよい寝室。ラグジュアリーなW.I.C.もライトアップし、スモークガラスから見せる空間として存在している。(ハイクオリティビルド認定住宅:Y邸 撮影/傍島利浩)

 

以来、自然素材による無添加住宅やSE構法、パッシブ設計など時代のニーズに応じた住宅を提供し続けた同社。小池祥子さんが力を注ぐインテリアコーディネートも高い評価を得て、 自他共に認める“デザインカンパニー”へと発展。現在、手がける住宅は年間10~15棟に及んでいますが、その根底には家づくりへの熱い思いがありました。

 

「東日本大震災や年始の能登半島地震、世界では戦争もあったりしますよね。そうした『何かあったときでないと、気づかない幸せ』のようなものを工務店は担保しなければならない。家づくりをピラミッドで例えると、“安全”と“健康”がそのピラミッドの底辺で、その頂点に『究極の自己満足の実現』というのがある。家づくりというのは、自分軸だけで実現したいものをつくっていく作業で、その空間にいると、満たされて豊かな気持ちになれる――それが注文住宅だと思うんです。だから“究極の自己満足できる家”をつくって、お客さまを元気にしたいと思っています。

 

そのため、ヒアリングやリラックスしたコミュニケーションを重視している。私たちは、お客さまとの座談会をお見合いと呼んでいますが、そこには私と専務が必ず参加します。あと、私が主に行うのは、基本設計と土地選び、住宅の基礎知識を伝えるセミナーですね。いまはSNSなど情報が多くあって、『自分の住まいでコレはやりたい』というコアな部分を決めるのはいいのですが、最初にあまりつくり込まないほうがいいんじゃないか、と。住宅は最短でも40~50年は住むものだから、趣味が変わるかもしれないし、少し余白があるほうがいい気がします。長い年月をかけて段々と醸成されていくような空間やインテリア、庭のほうがフレキシブルに暮らせるのではないかな、と思うんですよ」。

 

「会社としては既に取り組んでいることも含めて、5つの“のれん”=ブランドを展開していきたいと思っています。一つ目は、住宅・非住宅というような建築部門で、二つ目がデザインリフォーム、三つ目が庭の事業。四つ目が、いま社会問題として職人不足が叫ばれていますが、職人さんが花形となるような職人集団をつくりたい。そして、五つ目は街おこしで、具体的には不動産関連とリノベーションですね。常々思うのは、社員が活躍する場をつくりたいということ。自分が進むべき選択肢が増えたほうが、みんな生き生きと働いてくれるんじゃないか、と。いまは私ひとりがいろいろとやっていますが、それを脱却しないとこれらのことは成し遂げられないので。『人を育てていく』というのが、私のテーマになっている。『“きらきら光るスタープレーヤー”に、やりがいをもって働いてくれる場をつくる』というのが、社長としてできる最大の挑戦かなと思っています」。

 

フリーダムデザイン ハイクオリティビルド認定住宅

HQB認定061
『夫婦の好みを取り入れたアートが映えるNYのロフト感覚の邸宅』

フリーダムデザイン

盛岡市本町通3丁目5-8

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