幾重にもつながり視線が行き交う スキップフロアの家

通りから前庭を介して立つ、シックでモダンな片流れ屋根の住宅。シンプルな外観ながら、内部は6層にフロアが重なる複雑な形状をしている。食品製造や飲食関連業の経営者であり、一級建築士でもあるKさんが自邸をつくるにあたって構想したのは「ミルフィーユのように折り重なる家」。西側の最も低いビルトインガレージをはじめとし、1階玄関フロアから、リビングと書斎、読書コーナー、ダイニングキッチンと子供室、ロフトへと階段で連続する。高さの異なるダイニングとリビングは吹き抜け越しにつながるなど、視線が行き交い、家族の交流が自然と育まれている。壁一面の本棚や造作の机などもきめ細かく設えて空間を余すところなく活用し、数多くの居場所で思い思いに過ごせる家となった。

読書コーナーの下はKさんが作業に集中できる書斎がある。造作したデスクはリビングに接した飾り棚と連動させ、対面で話ができるカウンターとなるように設計。

フォトジェニックな天井は勾配の美しさを際立たせるレッドシダーパネリングで仕上げた。

リビングの上階、5層目のスペースがダイニングとキッチン。ルーフバルコニーやロフトから光が注ぎ、明るく開放的な家族が集う場所。

玄関の壁の色は、カラーコーディネーターの奥さまがセレクト。キャビネットの色を引き立てるマラカイトグリーン。奥さまの祖母がお母さまに贈った嫁入り道具の和箪笥を形見として受け継ぎ、宇治の職人のいる家具店enstolにリメイクを依頼。

4層目はお嬢さんお気に入りの宙に浮いたような読書コーナー。下階の書斎の気配を感じながらつながり、先が見通せるスケルトン階段を採用。

ルーフバルコニーは開口側を格子にして開放的に。ハンギングチェアでくつろぐ憩いの場となる。

ダイニングのあるフロアまでせり出すように拡張された書棚の横には、デスクを造作し、奥さまの作業スペースとした。各所に心地よい居場所を配した、軽快なリズムがある住まい。

西側のビルトインガレージを1層目として6層にフロアが重なるK邸。モダンでシックな外観は歴史ある住宅街になじむ。

撮影/伊藤信

美しいディテール

ダイニングの横につくられたセカンドリビング(ロフト)。壁付けの梯子と手摺を壁の色に合わせて白にしている点にセンスを感じます。些細なことですが、このようなノイズを減らす処理の積み重ねで、空間はぐっと洗練されていくものです。

建築知識ビルダーズ編集長 木藤阿由子

住まい設計工房
https://sumakou.com/
物件情報
物件名/K邸
所在地/京都府
延床面積/179.70㎡
1F/92.75㎡
2F/86.95㎡
家族構成/夫婦+子供2人
構造/木造SE構法
性能/耐震等級_3
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