設計・施工の工務店のメリット
認定住宅の工務店、テラジマアーキテクツの建築家・深澤彰司さんと、モダンリビングの発行人・下田結花のトークショーが、東京・恵比寿のアルフレックスジャパンのショールームで開催されました。
会場には、これから家を建てようと考えている方など30名が集まりました。
前半は、深澤さんと、後半はあるアルフレックス・ジャパン創業者の保科正さんと、そして三者でのトークも展開。
空間と家具、その両面からの暮らしへのアプローチの重要性について、語られました。
ここでは、深澤さんと下田さんのトーク部分について、お届けします。
テーマは「上質で快適な住空間とは」
深澤さんは、大学を卒業後、大手ハウスメーカーに勤めていましたが、「設計から施工まで一貫してやりたい」と考えるようになり、完全自社設計・施工を行うテラジマアーキテクツに就職したそうです。
テラジマアーキテクツは、創業59年。東京の城南エリアで注文住宅を手掛ける。拠点は、駒沢・青山・自由が丘(8/21open予定)の3店舗。
深澤さんが設計する際に大切にしていることは、外部空間とのつながり。特に都会の限られた敷地のなかで、空地をどう利用するか、外部をどう取り込むかによって、住空間の快適性は大きく変わってくるといいます。下の写真の家も、中庭のテラスによって、どの部屋にも光が届き、視線が抜けることで広がりのある気持ちのよい空間になっています。
スライドは、ハイクオリティビルド認定住宅「大きなキッチンに人が集う家」。
「室内の床とテラスの床の色が揃っているので、一体感がありますね。また床がフラットで外とシームレスにつながっている点も、この家のポイントだと思います」と下田さん。実は、内と外の床をフラットに仕上げることは、決して簡単ではないのです。たとえゲリラ豪雨があっても、室内に雨水が入ってこないように「排水」を考えた緻密な施工が必要で、それはひと手間も二手間もかかること。リスクを伴うので、施工会社にとってやりたい仕事ではありません。
「このような難しい仕上げができるのは、蓄積してきた施工技術があるからです。完全自社設計・施工のメリットと言ってよいでしょう」と深澤さん。テラジマアーキテクツは、深澤さん率いる建築家チームと、熟練の職人集団が、長年にわたり築いてきた信頼関係が最大の強み。
「どんなにきれいな図面を描いても、職人の技術がなければ品質は保てません。図面には表し切れない技術がたくさんあるのです。釘1本、始末1つとっても、手は抜けません」と深澤さんがいうように、設計と施工が一貫していると、難しい局面があっても双方の意思疎通ができているため、微細な部分まで品質が確保しやすいといえるでしょう。
対談では、参加者が気になるコストやメンテナンスについても語られた。
家を建てる人にとって、長期保証やメンテナンスも気になるところ。テラジマアーキテクツでは、自社で建てた家の10年後、20年後、その先も責任をもつという姿勢で設計し、施工し、メンテナンスも請け負っている。
「家は、つくる側も依頼する側もお互いに一生付き合う覚悟がいります。だから、お客様には他社も見てから、じっくり考えて決めてくださいと言っているんです」と深澤さん。設計したら、その先もずっと引き受けていくという、頼もしい姿勢です。設計・施工・メンテナンスが三位一体となってはじめて良質な住宅ができあがるのですね。
木藤阿由子(建築知識ビルダーズ 編集長)